鶴だより 2019年8月

釧路市動物園ふれあい主幹 松本 文雄

 

道東にも短い夏が訪れました。今年は天候不順で、5月は暑くなったのですが、その後は気温が上がらず、7月は雨や曇りも多く、日照時間は少なくなっています。ただ、春先に大雨などがなかったせいか、タンチョウの繁殖には問題がなさそうです。

釧路市阿寒町地区でも、十数つがいのタンチョウがヒナを育てています。タンチョウの生息地は湿原。北海道東部には釧路湿原や別寒辺牛湿原、霧多布湿原、風蓮湖周辺の湿地帯など、大きな湿原がいくつもあり、タンチョウの主要な生息地となってきました。道東でタンチョウが生き延びられたのは広い湿地があったことも大きな要因だったと思います。

しかし、生息数の増加とともに、繁殖に適した湿地が足りなくなってきました。徐々にタンチョウは営巣地を湿原内から、湿原にそそぐ河川の上流部へと広げていきました。阿寒町地区は釧路湿原から少し離れており、大きな湿原はありません。太平洋に流れ込む阿寒川と、釧路川の最下流部に合流する仁々志別川という2本の河川が地区内を流れています。20年ほど前には仁々志別川流域に3-4つがい、阿寒川とその支流の舌辛川流域に3-4つがい程度が営巣しているにすぎませんでした。しかし、現在では仁々志別川流域に6-7つがい、阿寒川流域では10つがい以上が営巣していると考えられています。仁々志別川流域の一部にはまとまった面積の湿地もありますが、多くのタンチョウたちは川沿いや支川に残った狭い場所で営巣しているようです。近くに農家や人家などもあり、人里に近い場所で生活しているのです。

このような場所は、環境も変わりやすく、また、外敵も近づきやすいため安全な場所とは言えません。特にヒナが孵った後は湿地を離れて、牧草地などを利用するため、キツネなどに襲われやすく、ヒナが取られてしまうことも多くあります。以前はなかなかヒナが大きく育つことは少なかったのですが、近年は、無事に育て上げることも増えてきました。タンチョウの親たちも、注意深く、賢く子育てをしているのかもしれません。

しかし、危険なのはキツネだけではありません。このように人里近くに出てきているため、交通事故も増えてきています。6月には3羽のヒナの死体が動物園に収容されました。明らかな交通事故は1件だけですが、他のヒナも事故にあった可能性もあります。私たちも注意して、タンチョウが育つのを見守っていきたいものです。