鶴だより 2019年12月

12月になって

松本 文雄(釧路市動物園 ふれあい主幹)

12月に入り、給餌も始まり、丹頂の里にもツルが集まり始めています。ただ、まだ、給餌場には20~30羽程度に留まっています。今年はすでに初雪は降りましたが、本格的な降雪もなく、畑には土が見ています。阿寒の里に来たタンチョウも給餌場に集まる前に、周辺の畑で餌をついばんでいるようです。

12月5日に北海道が行うタンチョウ越冬分布調査が実施されました。阿寒の給餌場には30羽程度でしたが、それより北に30~50羽程度の群れが3つも見つかり、阿寒の里周辺では150~160羽のタンチョウがいるのではないかと思われます。

2015年度から始まった環境省の給餌量削減事業により、給餌する量を少なくしていることもあるかもしれませんが、周辺の畑の環境の変化も大きいようです。阿寒は野菜農家のほかに、酪農も盛んです。酪農家の管理している畑の多くは牛に食べさせる牧草です。ただ、牛には牧草だけでなく、栄養価の高い配合飼料も与え、その一つがデントコーン(飼料用のトウモロコシ)です。このデントコーン、以前は輸入が多かったのですが、近年は自前で栽培するところが増えてきました。デントコーン畑は機械で刈り取りを行いますが、刈り取り後の畑にはこぼれたコーンなど、ツルの餌になるものが多くあります。このデントコーン畑の増加が、ツルの餌場を増やしているのです。

デントコーン畑の増加は阿寒だけでなく、道東各地で増えています。そのため、この時期でも根室や釧路の北部にタンチョウの群れが残っています。いずれ、雪に覆われ、餌が取れなくなれば、給餌場に移動してくると思われますが、農業形態の変化が秋のタンチョウたちの行動にも影響を及ぼしているのです。