丹頂の頭はなぜ赤いのか
吉野智生(釧路市動物園 ツル担当主査)
タンチョウの特徴として、頭が赤いことが挙げられます。
漢字では「丹頂」と書き、「丹」は「赤」、「頂」は「頭」を指します。
さて、ではタンチョウの頭はなぜ赤いのでしょう。
誤解している方が時々いらっしゃいますが、頭の赤い部分は羽ではなく皮膚で、多数の細かいイボ状の突起で覆われ、皮下血管内の血液が透けて見えるので赤いのです。
タンチョウの頭の羽は生後約1年で抜け始め、満2歳になる頃にはほぼ完全に裸出し、要するにハゲます。
これが本当のツルッぱげというわけですが、タンチョウにとっては大人の証です。
また病気やケガなどで貧血になった場合、色が薄く、橙色や白に近くなるので、健康状態を知る指標の一つになります。
別な方向から考えると、何のために禿げたのでしょう。
例えばニワトリのトサカや肉垂は皮下の毛細血管が発達しているので赤いのですが、空気に直接触れる皮膚が増えるので体温調節に役立っています。
また立派なトサカはオスがメスにアピールしたり、他の個体を威嚇したりするのにも役立ちます。
或いはハゲワシなどの死肉食者は、禿げることで羽毛に余計な汚れや細菌が付かないようにし、感染症にかかるリスクを下げています。
ではタンチョウの場合はどうでしょう。
特に死肉食でもないので、感染症防御というのもおそらく関係ないでしょう。
では繁殖に役立つのでしょうか。
この赤い部分は、興奮すると血管が拡張して血流量が増えるので大きくなり、落ち着いている状態では小さいままです。
またダンスや求愛の際には赤い部分が大きくなるので、タンチョウ同士のコミュニケーションや繁殖に役立っていると考えられます。
ただ、このハゲの大きさや色鮮やかさに個体差があるかどうかは正直なところ分かりませんので、個体ごとの繁殖成績にはおそらく関係ないと思います。