釧路市動物園 ふれあい主幹
松 本 文 雄
3月になり、給餌場に飛来するタンチョウも少しずつ少なくなりはじめています。この頃になると、集団の中に今年生まれの幼鳥(頭がまだ茶色のタンチョウ)が目立つようになります。タンチョウは春にヒナが産まれ、ひとつがいの親が1羽もしくは2羽のヒナを育てます。ヒナは3か月もすると親と同じくらいの大きさになり、生後100日程度で飛び始めます。自力でも食べ物を探したり、食べたりもするのですが、親と一緒にいて、親から食べ物をもらう事が多いです。
このようにいつも一緒で仲睦まじいタンチョウの親子ですが、年が明けて、1月を過ぎたころから一変します。ある時から、親は子を近くに寄せず、近づいて来る子をつついたり、追い回したりします。子は最初は戸惑い、何度も親に近づこうとしますが、親に追い払われて、最後は親から離れます。このような子別れを経て、幼鳥たちは独立するのです。幼鳥たちは若鳥で群れを作って行動するようになります。つがいのタンチョウはこれから徐々に、繁殖地に戻っていきます。給餌場に残った若鳥たちの群れは、4月になってもしばらくは阿寒の里に居ますが、そのうちにあちらこちらに旅立つようです。標識の付いたタンチョウの記録を見ると、翌年の冬に再び阿寒の里に訪れるツルもいれば、他の場所で越冬するツルもいます。おそらく他の仲間たちとの行動のなかで、越冬場所を定めていくのでしょう。
この冬は給餌量削減の影響もあり、最大でも200羽に満たない程度の集まり具合でした。今年は雪が少なく、給餌場以外で食べものが
手に入るところも多かったのでしょう。
そのせいか、阿寒川流域で、阿寒の給餌場に依存しない越冬タンチョウは増えているようで、阿寒川全体では250羽以上のタンチョウが越冬しているようです。
農家に依存しているツルも増えているようで、給餌場に依存しないのは良いことなのでしょうが、農業被害や事故などが心配になってきます。